前回の病気からすっかり良くなったグミちゃん。
おじいちゃんとおばあちゃんが、元気になったごほうびに
大阪のデパートに連れていってくれることになりました。
初めての大都会のデパート行き、グミちゃんはどうだったのかな?
さあて今回のおてがみは?
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はいけいサンタクロースさま
サンタさんお元気ですか?
トナカイさんも元気ですか?
くすの木町はすっかり雪も溶けて暖かくなって来ました。
グミも病気が治って元気いっぱいです。
おとうさんもおかあさんも、
「学校行くまでに治ってよかったな」っていうてます。
4月からグミは小学校に入るからです。
それで、この間はとってもうれしいことがありました。
おじいちゃんとおばあちゃんと一緒に、
大阪のデパートに行ってきたんです。
グミのランドセルを買いに行こうって前から約束してたんやけど、
やっと連れていってもらえました。
本当はおにいちゃんも一緒に行く予定やったのに、
おにいちゃんは町内の少年野球の試合があって行けませんでした。
「チェッ。お前ばっかり、いいな」ってふてくされてました。
いっつもおにいちゃんはいばってばかりいるので、
ちょっとだけいい気味でした。いひひ。
おじいちゃんとおばあちゃんは、川向こうの三軒長屋に住んでいます。
昔はこのおうちで一緒に住んでいたらしいのですが、
おとうさんが自転車屋さんを始めることになって
家が狭くなったので、別に住むことになりました。
でもしょっちゅう家に遊びに行ったり、
おじいちゃんおばあちゃんもうちに遊びに来たりしています。
おじいちゃんは、昔は山の仕事をしていたそうです。
木を切ったり、植えたり、炭を焼いたり。
だから今も庭で盆栽や花を育てています。
おばあちゃんはお裁縫が得意だったので、若い頃からずっと、
お守り袋を作る内職をしています。
八幡さんに頼まれて、八幡神社のお守り袋を作っているのです。
二人とも、グミやお兄ちゃんやマコトのことを
とっても可愛がってくれるので
おじいちゃんもおばあちゃんも大好きです。
デパートに行く日が決まると、グミはうれしくて、
毎日おかあさんに、「あと何日?」って聞いていました。
おかあさんは最初は「○日やで」ってこたえてくれてたけど、
最後には「何回も同じこと聞くんやないの!」って怒られました。
だって早く行きたいんやもん。ちぇっ。
そしたらおとうさんが、
「もう今から行っといたらどうや?
おじいちゃんたちが行くまで、デパートの倉庫にでも
泊めてもらいなさい」っていうのです。
それを聞いたトシオにいちゃんは、ひっくりがえって笑っていました。
「ほんまや。そうしたらええねん。
今から一人で行ってこいよ。あははは」
いいもん。おにいちゃんなんか、おみやげ買って来てあげへんもん!
ふん!
グミはおにいちゃんに思いっきりあっかんべーをしました。
待ちに待ったその日、グミは5時に目が覚めてしまいました。
「そんなに早起きしてもデパートまだ開いてへんよ」って
おかあさんは笑っていたけど、嬉しくて寝ていられないのです。
おじいちゃんたちが9時に迎えに来てくれるまで、
グミはそわそわして家の前で待っていました。
くすの木町から大阪まで汽車で2時間はかかります。
もし何かあってデパートが閉まってしもたらどうしよう?
グミは心配になってきました。
やっとおじいちゃんの姿が見えた時、走って出迎えに行きました。
「はよ行こ!デパート閉まってしまう!」
グミが泣きそうになってそういうと、おじいちゃんは、
「大丈夫や。夜の6時まで開いてるさかい、安心し」
グミの頭をごしごし撫でてくれました。
グミはそれを聞いたらちょっとだけ安心して、またうれしくなりました。
おかあさんはグミに
「これかぶって行き」
といって、帽子をかぶせてくれました。
「この帽子、高かったんやからなくしたらあかんで」
それは去年、お向かいのハトヤ帽子店で買ってもらった
赤いビロードの帽子で、黄色のリボンがついています。
ハトヤのおっちゃんは、
「これは上等でっせ〜!
美智子妃殿下がおととしのご成婚の時にかぶってはったんと
おんなじデザインでんねん。
グミちゃんがこれかぶるとどっかのお姫さまみたいやわあ」
といっていました。
おかあさんは、「んなあほな」と笑っていましたが、すぐに買ってくれました。
あとでおとうさんに、「お前もすぐに乗せられるやっちゃなあ」と笑われ、
おかあさんはシュンとしていました。
でもグミはあの帽子が大好きです。
よそゆきなので、お出かけの時しかかぶらせてもらえませんが、
ほんとうにお姫さまになったみたいで嬉しくなります。
さて、大阪駅に着いたらもうお昼前でした。
くすの木町とちがって、人がいっぱい、高い建物もいっぱいです。
迷子にならんように、おじいちゃんとおばあちゃんに
手をしっかり握ってもらって、デパートまで歩きました。
「混むとあかんさかい、先に大食堂に行こか」
おじいちゃんがそういうと、グミは「うん!!いく!!」って
大声で叫んだので、おじいちゃんもおばあちゃんもゲラゲラ大笑いです。
だって早くお子さまランチ食べたかったんやもん。
グミはまだお子さまランチを食べたことがありませんでした。
トシオにいちゃんは何年か前におじいちゃんと大阪に来たことがあって、
その時にデパートの大食堂で食べたそうです。
「チキンライスに旗が乗ってて、ご馳走がいっぱいついてるねん」
おにいちゃんはそう言うてたけど、どんなかなあ。
グミはどきどきでした。
デパートに着くと、すぐにエレベーターに乗りました。
大食堂は7階です。その上は屋上で、遊園地があるそうです。
エレベーターでは、帽子をかぶって手袋をしたきれいなおねえさんが
おじぎをしてくれました。
「ご来店ありがとうございます。上にまいります」
こんなイカすおねえさんは見たことがなかったので、
グミは口をあけて見とれていました。
「エレベーターガールっていうんやで」
あとでおばあちゃんに教えてもらいました。
あんなきれいなかっこうをするのなら、
グミもエレベーターガールになりたいなあと思いました。
大食堂に行くと、見たことないぐらい広い部屋で、
いっぱいテーブルがおいてあって、
たくさんの人がごちそうを食べていました。
白いテーブルクロスに、銀色の花びんにお花。
天井を見上げると、きらきらしたシャンデリアがありました。
それから、フサフサがいっぱいついた上等のカーテンもありました。
「お姫さまの食堂みたいや!」
グミはさっきよりもっと嬉しくなりました。
入り口の前にはごちそうの見本が置いてあります。
エビフライ、お寿司、うなぎ、ライスカレー・・それからそれから。
「グミ、ぜんぶ食べたい!」
そういうと、おじいちゃんもおばあちゃんも笑っていました。
「これはな、本物やないんやで。本物そっくりに作ってある模型や」
「なんで模型なん?」
「本物置いといたら腐るやろ。そやから模型を置いてはるんや」
グミはびっくりしました。だって、本物のごちそうみたいやから。
グミがもってるままごとのごちそうより、本物みたいやと思いました。
ウエイトレスのおねえさんに連れられて、空いた席に座りました。
ここのおねえさんもイカす格好をしています。
ぐんじょう色のワンピースに、白のエプロンをして、
銀色のお盆を持っていました。
おじいちゃんが入り口で買った食券を渡すと、しばらくして
ご馳走を運んできてくれました。

おじいちゃんはエビフライ。おばあちゃんはうな重。
そしてグミの「お子さまランチ」!
「うわ〜、チキンライスに旗が乗ってる!
おにいちゃんがいうた通りや!」
グミはうれしくてうれしくてたまりませんでした。
チキンライスにエビフライ、
アツアツのハンバーグに目玉焼きがのったのもあります。
「きれいやなあ!ごちそうやなあ!」
食べるのがもったいなかったけど、おなかが空いていたので、
ぱくぱく食べてしまいました。
それからオレンジジュースもついていました。
グミが好きな渡辺のジュースの素と全然ちがう味でした。
冬に食べるおみかんそっくりの味でした。
グミはチキンライスにのっていた旗をもらって帰ることにしました。
家でおかあさんにチキンライスを作ってもらって
この旗をのせようと思ったのです。
おうちでお子さまランチが食べられるみたいでうれしくなりました。
もう1本あったらトシオにいちゃんにもあげるのに、って思いました。
ではサンタさん、ちょっと眠たくなったので、今日はここでおしまいにします。
デパートのおはなし、今度のおてがみにも書きますね。
屋上の遊園地で遊んだお話するから、きっと読んでね。
じゃあおやすみなさい。
サンタさんも、ぐっすり寝てね。
昭和36年3月30日
青田グミ