第六回 「グミちゃんデパートに行く 後編」


前回、おじいちゃんとおばあちゃんに連れられて
初めて大阪のデパートに行ったグミちゃん。
エレベーターガールに大食堂のイカすおねえさん、
お姫さまの食堂のようなキラキラシャンデリア、
そして夢にまで見たお子さまランチ。
グミちゃんは心臓がはちきれそうなほどワクワクドキドキ。
興奮がしずまる様子はなさそうです。

さあて今日のおてがみは?

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はいけいサンタクロースさま

サンタさんお元気ですか?
トナカイさんもお元気ですか?


この間は大阪のデパートに行ったおはなしを書きました。
今日はその続きを書こうと思います。
いっぱいおはなししたいことがあるから
最後まで読んでね、サンタさん。


デパートの大食堂でお子さまランチを食べたあと、屋上に行きました。
屋上には遊園地があるのです。
いっぱい乗り物があって小さい動物園もあるって
トシオにいちゃんから聞いていたので
グミはずっと行きたくてたまりませんでした。

屋上に行ったら、入り口にさくら色のぼんぼりとか
いろんな国の旗が飾ってあって
その向こうには見た事もない乗り物や
動物のお人形がいっぱい置いてありました。
「うわああ!すごいきれい!すごいすごい!」
グミはおじいちゃんとおばあちゃんの手を引っ張って
どんどん中に入って行きました。

「見て見て!なんかいっぱい楽しいもんがある!
いろんなもんが動いてる!」
グミはうれしくてうれしくて、急にかけ出したくなりました。
大きなスピーカーからカッコーワルツが流れていて
それにあわせるように、大きなコーヒーカップがぐるぐる回っています。
中には小さい子が乗っていて、みんなきゃあきゃあ楽しそうに笑っていました。
おとうさんやおかあさんが、カメラを向けて写真を撮っていました。
みんなニコニコ笑ってとっても楽しそうです。
大きな観覧車も、青空に向かって○の字を書くように、ぐるぐる動いていました。
グミは胸がはちきれそうなほどドキドキしました。
ほんまに、こんな楽しいとこ初めてや!


グミは一番最初にコーヒーカップに乗りました。
おばあちゃんは乗り物酔いをするからというので
おじいちゃんが一緒に乗ってくれました。
カップの中に入るとちょこんと座るところがあって、
真ん中に銀色の棒に丸いお盆みたいな台があります。
「これをクルクル回すと動くんや」
しばらくするとコーヒーカップが動きだしたので
グミはおじいちゃんのいうとおり、
銀色のお盆をよいしょ、っと回しました。
するとカップはさっきより大きくくるっと動くのでびっくりしました。
「おじいちゃん、動いた!くるっと回った!」
「よし、もっと回したろ」
おじいちゃんが力いっぱいお盆を回すと
さっきよりカップはくるくる動きます。
「うわ〜、回る回る!」
「そうか、よし!」
グミはすごく楽しくなって、きゃあきゃあ言いながら
おじいちゃんの腕にしがみついて笑っていました。
おじいちゃんもあははって笑っていました。


コーヒーカップの次はゴーカートに乗りました。
小さいおもちゃの車に乗ってじぶんで運転するのですが
こんなイカす車は見たことがありませんでした。
赤いマッチ箱みたいな四角い車で、かどっこが丸いです。
これはイギリスの車やで、と、となりで並んでいた子のおとうさんが
その子に説明していました。
グミは車といったら、駅前のハイヤーか
近所のミヨシ電気のおっちゃんが乗ってる青いミゼットぐらいしか
知らなかったので、イギリスの車と聞いてびっくりしました。

ちゃんと動かせるかドキドキやったけど
車に乗ったら勝手に前に動いたのでおどろきました。
敷地内をぐるっと2周して車は止まりました。
「イギリスの車はすごいなあ。勝手に動くねんもん」
っていうたら、おじいちゃんもおばあちゃんもニコニコして
「ここの車は皆そうや。機械で動かしてはるんや」やて。
グミは、何だかようわからんかったけど
でもほんまの車を運転してるみたいで楽しかったです。

車から降りてくると、おばあちゃんが「ちょっとおいで」って
手招きするので行ってみると
「これのぞいてみ。大阪の町が見えるねんで」
って、望遠鏡を指差して、十円玉をチャリン、と入れました。
「ほら、ここに乗って見てみ」
木の箱みたいな台に乗って望遠鏡をのぞくと
うんと遠くの方まで町の風景が見えます。
「うわ〜!見える見える!あれはくすの木町かなあ?」
って言うと、おじいちゃんはニコニコ笑って、
「くすの木町までは見えへんなあ。汽車で2時間もかかるからなあ」
と言いました。
グミは遠いとこまで来たんやなあ、ってつくづく思いました。
望遠鏡の中では、アリさんが住んでるような家がいっぱい並んでいました。


「ちょっと休憩しよか」
おじいちゃんがそう言うと、売店に連れていってくれました。
売店には見た事がないようなジュースの機械が置いてありました。
ガラスの箱に入った機械から、噴水のようにジュースが湧き出ています。
みかん、パイン、メロン。
グミが大好きなバナナもあります。

「ソフトクリームのほうがええんとちがうか?」
おじいちゃんがニコニコしながら差し出したのは
白くクルクルとぐろを巻いたアイスクリームです。
「ほしい!ほしい!」
グミはおじいちゃんからソフトクリームをもらうと
べロッと大きくなめました。
グミはソフトクリームは八幡神社のお祭りの時しか食べたことがありません。
夜店で売っていたのをおとうさんが買ってくれたのです。
でもこのデパートの方がうんと上等の味がしました。
「おいしい!上等の味がする!」
っていうと、おじいちゃんもおばあちゃんも、
「そうかそうか。上等の味がするか」
っていうて笑っていました。


休憩が終わると、今度は「おさるの電車」に乗りました。
おさるさんが運転手さんになって電車の前に乗っているのです。
トシオにいちゃんから聞いたことはあったけれど、
ほんもののおさるさんを目の前で見るのは初めてだったのでワクワクです。

おさるさんは運転手さんが着るような紺色の制服を着せられ、
ちょこんと先頭車両に座っていました。
グミは一番前の席で、おさるさんの真後ろ。
おさるさんが振り返ってグミの方ばっかり見るので、
グミはドキドキしていました。

「ポッポ〜」
汽笛の音がして、汽車が動き出します。
汽車は5つぐらい車両がついていて、ゆっくりレールの上を動いていきした。
グミはちょっと恐かったので、手すりにしがみついていました。
すると、その時です。
「キ〜!」
突然、おさるさんが手を伸ばして、グミの帽子をさっと取りました。
「ああ!」



グミはあわてておさるさんの方に手を伸ばしましたが、
おさるさんはグミの帽子をかぶったまま知らん顔です。
「帽子・・返して!グミの帽子返して!」
必死でおさるさんにいいましたが、グミの声は汽笛にかき消されて
おさるさんの耳に届いてないようでした。

汽車が止まった後、おさるさんはすぐにデパートの人に連れられ、
どこかに連れていかれました。
「ああ、せっかく美智子妃殿下のと同じ帽子やったのに・・・
帰ったら絶対おかあさんに怒られるなぁ・・・」



汽車に乗って、家に着いのは6時前でした。
グミが家に着いたのと同時ぐらいに「ただいまあ!」と声がしました。
トシオにいちゃんでした。

部屋につくとさっそく買ってもらったばかりのランドセルの箱を開けてみました。
おかあさんがちょっと背負ってみ、っていうから
箱から出してみると、ランドセルは革のにおいがして
なんだかおとなになったような気分です。
よいしょっとグミが背負うと、おかあさんは
「うわ、かわいいやないの!」ってほめてくれましたが
中身は空っぽのはずやのに、すごい重くて
思わず後ろに倒れそうになりました。
「なんや、後ろから見たら、グミが全然見えんなぁ」
とおとうさんは笑っています。
「ちょっと、これ大きすぎる・・・」
でもおかあさんは
「心配せんでもすぐにからだも大きなるねんから大丈夫や」
と笑っています。

その様子を見ながらトシオにいちゃんは
「なんや、グミばっかり」って
ちょっといじけてしまいました。
するとニコニコしながらおじいちゃんが
「トシオ、その包み、開けてみ」
というと
泥だらけのユニフォーム姿のおにいちゃんは
不思議そうな顔でデパートの包みを開けました。
「あ!!野球盤や!!野球盤や!!」
トシオにいちゃんは顔を真っ赤にして大喜びです。



「おじいちゃん、買ってきてくれたんか?大阪で?」
「そうや。これ欲しかったんやろ?」
おじいちゃんがいうと、おにいちゃんは
「うん!!ずっと前から欲しかってん!ありがとう!ありがとう!」
といって、今にも泣き出しそうな顔で野球盤を見ていました。
「よかったな、トシオ。おじいちゃんとおばあちゃんにお礼いうんやで。
グミもやで。わかったか」
おかあさんがそういうと、おにいちゃんもグミも「ありがとう!」と叫びました。
「そんな大声出さんかて聞こえてるよ。まだ耳は若いよ」
おじいちゃんがそういうと、皆であはははと笑いました。

しばらくして、おじいちゃんとおばあちゃんは、帰りました。
おじいちゃんとおばあちゃんが帰る時
「今日は楽しかった!また行きたい!!」っていうと
「そうか。楽しかったか。いい子にしてたらまた連れてったるな」
そういいながらおじいちゃんはグミの頭をなでてくれました。

ああ、今日はホンマに楽しかった!めでたし、めでたし・・・・
と思ってたところでおかあさんが
「そういうたらあんた、帽子どないしたん?」
ああ!忘れてた!!しまった・・・
「ぼ、ぼうしな・・・・おさるさんに取られてん・・・」
こわごわおかあさんに本当のことをいうと
「アホなこといいな!さるが帽子なんか被るわけないやろ!!」
ホンマやもん!!ホンマにおさるさんがグミの帽子取ったんやもん!!
いくらいっても、おかあさんもおとうさんもおにいちゃんも信じてくれませんでした。
ついでにマコトにもいったけど、寝てました。
犬のオッサンにいったら、顔をなめられました。
わかってるんかなぁ・・・。


ねえねえサンタさん。サンタさんだけは信じてくれるよね。
グミはホンマにおさるさんに帽子を取られてん。
でももういいです。あの帽子はおさるさんにあげることにします。

でも、ひとつだけお願いがあります。
もし空から、グミの赤い帽子をかぶったおさるさんが見えたら、
大事にしてね、っていうといてくれますか?
せっかくおかあさんが買ってくれた、お姫さまの帽子なんやからね、って。


それではこれで終わります。
いつか一緒にデパートの屋上でコーヒーカップに乗ろうね。
今度はグミが銀色のお盆を回してあげるね。


またおてがみ書きます。
さようなら。


昭和36年4月2日

青田グミ