前回、グミちゃんが八幡神社でお願いしたのは
「サンタさんに会えること」
そして「赤ちゃんが無事生まれること」でした。
はたしてグミちゃんの願いは叶えられるのでしょうか。
さあ今日のおてがみは?
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はいけい サンタクロースさま
サンタさん、サンタさん、聞いてください!
ニュースです!
赤ちゃんが生まれたんです!
グミのおうちに赤ちゃんが来たんやで!
あれはおとうさんと八幡さんの節分祭りに行った次の日のことです。
おかあさんはいつものように朝から忙しそうにしてました。
朝ごはんの片づけをしたあと、
「ちょっと集金に行ってくるわ」
と言って集金かばんを持って、自転車にまたぎました。
おとうさんは、
「大丈夫か?そろそろ生まれるねんから、家でじっとしとき」
って心配してたけど、
「どうもあらへん。石田石材店さんやからすぐや」
と言って、あっと言う間に自転車をこいで出ていったのです。
「ほんまに大丈夫かいな。あんなおっきいおなかして」
おとうさんが心配するのも知らず、
おかあさんは近所の人に「まいど〜!」って元気にあいさつしながら
はるかかなたに消えていきました。
それからだいぶ時間が経ったころです。
どこからかすごい悲鳴が聞こえてきました。
「どいてどいてー!!」
「あかん、たすけてー!!」
わたしもおにいちゃんもおとうさんも
何事かとびっくりして店の前に飛び出しました。
すると、向こうから、商店街のひとごみをかき分けて
ものすごい恐い顔をしたおばさんが走ってくるのです。
風船のような大きいおなかを押さえながら、
「いてててて!!痛い痛い!」
「あかん、もう限界や!」
と叫びながら走ってくるのを見て、
「あ!おかあさんや!」
っておにいちゃんが叫びました。
おとうさんはパッと走っていって
おかあさんを抱きかかえました。
「どうしたんや??大丈夫か??」
するとおかあさんの後ろから、
おじさんがガラガラとリヤカーを引いて走って来ました。
「乗っとき、言うてんのに、ほんまにもう・・」
その人は「石田石材店」のはっぴを着ていました。
おかあさんはその人のことなんかおかまいなしで、
「あかん、もう産まれる!はよ産婆さん呼んで!
いてててて!おなか痛い痛い痛い!!」
そう叫びながらその場にしゃがみこんでしまいました。
おとうさんはすぐに産婆さんを呼びに走り、
おにいちゃんはおかあさんを抱えて寝間に連れて行きました。
「どないしたんや?石田はん。」
騒ぎを聞きつけてやってきたのは、
駅前のミヨシ電器のおじさんでした。
ミヨシ電器のおじさんは、
リヤカーの前でゼエゼエ言いながらうずくまっている
石田石材店のおじさんにたずねました。
「どないもこないも、えらいことでんがな。
ここの奥さんがうちに集金に来はったんですけど、
急に産気づきましてな。
痛い痛い!言うてわめかはるさかい、お医者はん呼ぼう思ったんやけど、
どうしても家で産むんや!って言わはりましてな。
そしたらうちの大将が、ほなリヤカーで送って行き!って言うて
皆でよっこらしょ!って奥さんをリヤカーに積んで、
ワシが引っ張って走ったんですわ。
ほんなら、ここの奥さんが、
『あかん、しんきくさい!』
言うて、リヤカーを飛び降りはったんですわ。
『すんません、走ったほうが早いみたいやし、走って帰ります』言うて。
そらあかん、走ってこけたらどないするんや!
もうちょっとで着くさかいに、おとなしく乗っとき、言うてるのに
『あかん!もう産まれるねん!カンニンやで〜!』
言うて、走っていかはりますねん。
ワシ、何かあったらいかんと思って、リヤカー引いて
必死で追いかけましたがな」
石田のリヤカーのおじさんは汗だくになりながら、
ミヨシ電器のおじさんに話していました。
ミヨシ電器のおじさんは
「ここの奥さんも無茶しよるからなあ。
昨日もな、自転車に乗ったまま、
片手でもう一台自転車持って走ってはるねん。
自転車の配達らしいねんけど、あぶのうて見てられへんかったで。
あんたサーカス出たらどないや?言うててんやけどな」
そう言うと、カッカッカッと笑って
リヤカーのおじさんの背中をバンバン叩いていました。
わたしもおかあさんがサーカスに出たらおもしろいやろな、って思いました。
それからすぐに産婆さんが来て、
わたしとおにいちゃんは外で遊んでいるように言われました。
赤ちゃんが産まれるとこ見たかったのにな。ちぇっ。
仕方ないので、二人で公園に行き、ジャングルジムで遊んでいました。
でも、まもなくして、おとうさんが呼びに来たの。
「おーい、赤ちゃんが産まれたぞ!」って。
「男の子やぞ!お前たちの弟やぞ!」って。
「えー??ほんま??やったー、一緒に野球できる!」
おにいちゃんはそう言うと、飛び降りて走って行きました。
わたしも嬉しくて走って行きました。
「男やったら『九』や!坂本九ちゃんの『九』や!」
もう、絶対九ちゃんや!
・・でもサンタさん。
赤ちゃんの名前は九じゃなくて『マコト』になったん。
なんで九じゃあかんの?
今、はやってるやんか。
「あほか。三番目の子やのに『九』はおかしいやろ」
っておにいちゃんは笑うのです。
いい名前やと思ったのになあ。ちぇっ。
九ちゃんにはなれなかったけど、マコトはとってもかわいいです。
まだおかあさんの横で寝てるだけやねんけど、
いっつも口をゴニョゴニョさせて、何かおはなししたそうやねん。
「なあに?マコト、何かおはなししたいの?」
って聞くと、ふわぁ〜ってあくびするねんで。
ほっぺたを指でさわると、ぷにぷにしてるねん。
つきたてのお餅みたいで、すごいおいしそうです。
おかあさんに、
「お餅みたいやなあ」って言うたら、
「かじったらあかんで」って笑われました。
それにね、マコトは手をいっつもギューッてにぎってるの。
何が入ってるんかなあ。
何か握ってるんかなあ。
気になって、そーっと手のひらを開けたら、
何にも入ってませんでした。
でも握ってる手がちいちゃくてかわいいので、
グミはその中に自分の指を入れてみました。
マコトは、ぎゅっと握り返してくれました。
赤ちゃんやのに、けっこう力があってびっくりしました。
サンタさん、グミはマコトと握手してん。
ずっとずっと仲良くしようね。
ずっと一緒に遊ぼうね、って。

そしたらトシオにいちゃんも、
「おれも」って、マコトの左手に
自分の指をにぎらせました。
マコトは同じように、ぎゅっとにぎり返しました。
「あんたら、かわいがってやってな」
それを見ていたおかあさんはお布団に横になったまま、
にっこり笑いました。
「そうやで。新しい家族や。みんなでかわいがってやろな」
おとうさんもニコニコ笑いながら言いました。
マコトは返事するみたいに、
「ふわあ〜」って大あくびをしました。
その顔があんまりかわいいので、
みんなで大笑いしました。
笑うたびにうれしくて、グミはいっぱいいっぱい笑いました。
おにいちゃんも、おかあさんも、おとうさんも、
ずっと笑っていました。
体がぽかぽか温かくなって、
とってもいい気持ちでした。
しあわせやなあ、って思いました。
サンタさん、今度のクリスマスには
マコトにも会いに来てね。
サンタさんのことマコトにおはなししとくからね。
それじゃまたおてがみ書きます。
さようなら。
昭和36年2月10日
青田グミ